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Netflix映画『楽園の夜』感想(ネタバレあり)〜自らの手で物語に決着を付ける、強烈な意思〜

Netflixオリジナル映画『楽園の夜』ネタバレを含めた感想です。『新しき世界』『The Witch/魔女』のパク・フンジョン監督最新作として期待を裏切らない秀作です。

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<作品情報>

原題:Night in Paradise
製作年:2020年
製作国:韓国
日本配信日:Netflixにて2021年4月9日配信開始
本編尺:2時間11分
監督:パク・フンジョン
出演:オム・テグ、チョン・ヨビン、チャ・スンウォン、イ・ギヨン
ジャンル:ドラマ、アクション

<予告編>
 

あらすじ


何者かによって腹違いの姉と姪を殺された挙句、追われる身となった組織の構成員パク・テグ。プソクン派ト会長のスカウトを断ったために大切な人々を殺されたと思ったパクは相手側に単身乗り込み報復する。逃亡先の済州島で、やくざ者の叔父のせいで家族をロシア人に殺された女性ジェヨンと心を通わせていく裏側で、自分が仕えているヤン社長派とプクソン派の構成員の間で、パクをめぐるが謀略が進められていた…。

 

感想


評価:★★★★☆

昨年のヴェネツィア国際映画祭にも出品された『新しき世界』『The Witch/魔女』のパク・フンジョン監督最新作は、ノワール的な静謐なタッチと、感情の高ぶりのピークをアクション的見せ場で爆発させる構成、さらにはキャラクターの魅力を立体的に描写する手腕が光る秀作に仕上がっている。

特に主人公のパクが逃亡先で出会う女性ジェヨンの造形が素晴らしい。余命幾ばくもない中で、周囲の愛する者たちを次々と殺していくヤクザものを憎み、自らの手で引き金を引くまでの心の機微を丁寧に描写していく。ラストに主人公としてバトンを引き継ぎ、自らの手で物語に決着を付ける、料理店での一大スペクタクルは必見だ。

また、「生まれたのは後だが、死ぬのは先だから、タメ口ぐらいいいでしょ」「大丈夫じゃないとわかっていながら、大丈夫と聞く奴が嫌い」といったパクとジェヨンの軽口を叩きあう台詞や、出会いの場面でジェヨンが自分の頭に銃を突きつけて撃つマネをする仕草も、終盤に違う意味を持たせた形で反復するのも巧く、この終わりなき連鎖を断ち切るキャラクターの強烈な意思に繋がっている。

アクション描写も過去作に引けを取らず、サウナでの殺戮やカーアクションの末に車内でのもみ合いなど、銃だけでなくアイスピックや車の鍵でも相手にダメージを与え続ける執拗さが、スタイリッシュさだけでない感情の発露として、より魅力的な見せ場になっている。