Netflix映画『私というパズル』感想(ネタバレあり)〜ホラーより怖い冒頭の自宅出産シークエンス〜
Netflixオリジナル映画『私というパズル』ネタバレを含めた感想です。子供がいる身としては、自宅出産によって我が子を失うまでの過程を追い続ける冒頭が、もはやホラーより怖いです…。
あらすじ
ボストンで暮らすマーサは、パートナーであるショーンとの間に授かった赤ん坊を自宅で出産する準備を整えていた。助産師イヴ立ち会いのもと、壮絶な痛みを乗り越えて出産するが、赤ん坊はすぐに死んでしまう。計り知れない悲しみと喪失感の中で、対立の絶えないパートナーや高圧的な母との関係に苦悩するマーサ。やがて彼女は、世間から誹謗中傷を浴びせられる助産師イヴと法廷で対峙することになるが…。
感想
評価:★★★☆☆
とにかく冒頭からの、自宅出産によって我が子を失うまでの過程を追い続ける一連のシークエンスが迫力たっぷりでもはやホラーより怖い。しかも長回しのような形でカメラが家の隅々まで行き来するため、その後の「不在」をより強調させる効果を上げるとともに、家はもはや安らぎとは真逆の場所になっていく。
そんな衝撃的なオープニングから展開する本作は、墓石に掘られた我が子の名前のスペルミスを大した問題だと思わない男性側と、埋葬を拒んで我が子の亡骸を大学に献体しようとする女性側といったように、パートナー同士や周囲との関係性の揺らぎや崩壊を淡々と紡いでみせる。
一方で、観客に一部始終を目撃させたにも関わらず、劇中で終始世間の論点として上がっている助産師の行為は善か悪かという問題に関しては踏み込まず、産んだ母親がある意味自己完結する形で幕引きするのが中途半端な印象を受ける。
確かに子供の痕跡を消そうとしていた彼女が、出産直後には確かに母親として我が子を抱いていた写真を見つけることで前に進むことができたという動機付けは的確だが、自宅出産にこだわる母親のエゴにも切り込んでいたのであれば、もっと社会性を帯びた作品に仕上げられたはずだ。