Netflix映画『時の面影』感想(ネタバレあり)〜「掘る」行為は、過去に想いを馳せ、歴史を肯定的に書き直すこと〜
Netflixオリジナル映画『時の面影』ネタバレを含めた感想です。「掘る」という行為に、過去に想いを馳せ、歴史を肯定的に書き直すといった意味合いを込めた人間ドラマです。
あらすじ
第2次世界大戦が迫るイギリス、サフォーク州。未亡人のエディスは、自身が所有する土地にある墳丘墓を発掘するため、経験豊富なアマチュア考古学者バジルを雇う。やがて彼らは、予想していたより遥かに古い時代の歴史的遺産を発見するが…。
感想
評価:★★★☆☆
開戦前夜のイギリスを舞台に、世紀の発見となったアングロサクソンの船葬墓サットンフーをめぐる物語は、代々発掘が天職だった地方博物館の採掘者と大英博物館の考古学者との対立や協力、難病を抱えたシングルマザーと生まれ育った土地との数奇な運命を絡ませながら展開していく。
原題が「Dig」となっていることからも分かるように、本作は「掘る」という行為そのものに、過去に想いを馳せるとともに、過去や現在ではなく未来にルーツを伝える、あるいは野蛮だと思われていたアングロサクソンが実は文化や芸術や貨幣を持っていたという歴史の肯定的な書き直しといった意味合いを加える。それはまさに人類の野蛮な行為そのものである戦争と対比され、永劫の価値あるものとして埋め直して保存される。また歴史に埋もれた採掘者の功績を「掘り直す」意義も本作には込められているだろう。
そんな意義を描きながらも、例えば戦争に突入すると採掘という行為自体が中止になってしまうという「タイムリミット」のようなものを作劇的に活かせていない等、終始淡々と描かれていくのが物足りない。また、フォトジェニックなショットの連なりでロマンチックに描かれる、リリー・ジェームズ演じる既婚者が「自分に正直に生きる」末にたどり着く恋愛劇も本筋と上手く絡んでいかないのもマイナス。