RICKのしまシネマ 

映画館のない離島から、NetflixやAmazonプライムビデオの新作配信映画を中心に爆速レビュー!

Netflix映画『The Soul:繋がれる魂』感想(ネタバレあり)〜複雑怪奇なミステリーの先に待ち受ける、驚くべき「魂」のゆくえ〜

Netflixオリジナル映画『The Soul:繋がれる魂』ネタバレを含めた感想です。真相がなかなか見えない複雑怪奇なミステリーの先に待ち受ける「魂」のゆくえに驚愕必至の近未来SFです。

f:id:rick4455:20210907165255j:plain

<作品情報>

原題:緝魂
製作年:2021年
製作国:台湾、中国
日本配信日:2021年4月14日Netflixで配信開始
本編尺:2時間10分
監督:チェン・ウェイハオ
出演:チャン・チェン、チャン・チュンニン、クリストファー・リー
ジャンル:SF、ミステリー

 

あらすじ


2032年台北。ひとりの実業家が死を遂げた不可解な事件。捜査に乗り出したガンに侵されている検察官・チャオとその妻は、やがて恐ろしい秘密にたどり着き、自らの生と死の狭間で葛藤することに。

 

感想


評価:★★★☆☆

本作はある殺人事件を信用できない語り部たちが証言していく『羅生門』スタイルで進んでいくが、冒頭で娑婆世界の四苦八苦がテロップで表示されるように、「魂」にまつわる苦悩が根底に横たわっている。事件の真相と、魂のゆくえを追い、知られざる領域に足を踏み込むと見えてくる驚くべき景色。複雑怪奇なミステリーとして、混乱させずに語っていく手腕が光る。

宗教要素が散りばめられていくこともあり、前半はオカルト色が強い。怪しげな印、凶器となった金剛杵、死体のそばにある儀式の痕跡。呪いの言葉を全身に掘った男、陰陽思想にはまっていた女、そして生霊に取り憑かれた女。家族をおざなりにした父親を、自殺した母親に代わって殺す息子の復讐譚として物語られる。

だが本作は、そこから宗教とは真逆の科学に舵を切ってみせる。健全な神経細胞を複製させ、転移した癌を治療することで傾いた会社経営を再生しようとする。そのために臨床実験を社長自らが行っていた胡散臭い話が浮上してくる。ここで家族の物語に介入してくるCEOが鍵を握る。

ここから本作は、「魂」と「身体」が不一致な状態を、トランスジェンダーの物語に落とし込むという予測不可能な展開を見せる。倫理的、科学的、法的に誤っていることでも、愛する者のためなら道を踏み外す選択をしてもいいのか。同じく癌で余命僅かな主人公も、いつの間にか物語に巻き込まれ、傍観者から当事者へと変わっていく。一見飲み込みづらい物語を、最後まで語り切る手さばきと仕掛けが巧みな一作だ。