Netflix映画『Mank マンク』感想(ネタバレあり)〜男に媚びへつらわない、魅力的な女性たちの生き様〜
Netflixオリジナル映画『Mank マンク』ネタバレを含めた感想です。自分の作りたいものを作るという我儘かつ贅沢な映画作家デビッド・フィンチャーの歓びが感じられる作品です。
あらすじ
1930年代のハリウッド。脚本家マンクはアルコール依存症に苦しみながら、新たな脚本「市民ケーン」の仕上げに追われていた。同作へのオマージュも散りばめつつ、機知と風刺に富んだマンクの視点から、名作誕生の壮絶な舞台裏と、ハリウッド黄金期の光と影を描き出す。
感想
評価:★★★★☆
ハリウッド界隈の人間模様を、『市民ケーン』ばりに時系列が頻繁に往来する構成で描いた本作は、Netflix制作にもかかわらず、陰影の濃いモノクロ映像かつフィルム痕まで付け足すという映画へのこだわりが随所に見られ、またNetflix製作だからこそ娯楽性を極端に排し、自分の作りたいものを作るという我儘かつ贅沢な映画作家の歓びが感じられる。
本作はハリウッドでアメリカンドリームを掴み取るといった夢見心地な作品ではない。映画が権力や政治と癒着していたシステムと、そこで皆が狡猾かつ冷静に立ち振る舞っていた生きざまを、事実に基づいた圧倒的な情報量に観客を放り込みつつ、クールに物語を捌いてみせる。
特に印象的なのは女性たちの描きかたで、権力者の愛人、脚本家の妻、脚本執筆を手伝う女性など実に魅力的。自分を過信せず、男に媚びへつらっているわけではなく、滅茶苦茶な男の側にいると退屈せず、むしろ貸しを返してもらうまでとことん付き合ってやるという生きざまに惹かれる。