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Netflix映画『悪夢は苛む』感想(ネタバレあり)〜いかなる時でも親は我が子を信じてあげられるか〜

Netflixオリジナル映画『悪夢は苛む』ネタバレ含めた感想です。外界から身体の内側に入りこむ虫酸が走るような感覚を散りばめながら、親と我が子の信頼関係を考察してみせる奇妙な味わいの一作。

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作品情報

原題:Distancia de rescate
製作年:2021年
製作国:アメリカ・チリ・ペルー・スペイン・アルゼンチン
日本配信日:2021年10月13日Netflixで配信開始
本編尺:1時間33分
監督:クラウディア・リョサ
出演:マリア・バルベルデ、ドロレス・フォンシ、ヘルマン・パラシオス
ジャンル:サスペンス

予告編

youtu.be

あらすじ

夏の間だけ町に滞在している女性と地元の住民という、2人の若い母親が出会う。やがて彼女たちの関係から、迫り来る環境災害と精神の危機が明らかになってゆく。

感想

評価:★★★☆☆

本作はとても癖のある語り口の映画だ。アマンダという女性から見た現実の世界を、彼女とダヴィドという少年がまるで副音声で解説しているように反芻する。しかも、好きなところから再生・停止できるようなビデオ的な感覚のストーリーテリングであり、それ故、同じような断片が繰り返し映し出されたり、細部に目を凝らすことが重要だとメタ的な視点で示されたりと、とにかく難解な印象は受ける。

だが、本作の軸となるものは至ってシンプルだ。それは、いかなる時でも親は我が子を信じてあげられるか、ということだ。たとえ怪しげな呪術によって病気が治る代償として、かつての我が子ではない佇まいで、まるで羊水から再び生まれてきたように戻ってきても、そんな我が子を抱きしめて受け入れてあげられるのか。それが終始問われている。日常的に親が我が子の救える距離とリスクを瞬時に計算していても、その計算している物差し自体が狂ってしまうような事態を目の前にし、母親は狼狽えていく。

人体に影響を及ぼすものが世の中には溢れていると言われているが、実際にそれが人間の身体の中でどのように悪影響を及ぼすのか、いまいち実感が湧かない。それを農薬や虫といったものや、馬や人間の生殖活動といったような、外界から身体の内側に入りこむ虫酸が走るような感覚を散りばめることで、精神が錯乱するような状態に陥らせようとする一方で、それを主観的ではなく、ナレーションを交えて客観的に考察することで物語のバランスを取ろうとした、奇妙な味わいの実験作だ。