Netflix映画『雪の峰』感想(ネタバレあり)〜雪山で天秤にかけられる、命の重さと価値〜
Netflixオリジナル映画『雪の峰』ネタバレ含めた感想です。雪山で天秤にかけられる、命の重さと価値。シンプルな状況で人間のエゴイズムを揺さぶる見応えっぷりの一作。
作品情報
原題:Tata muta muntii
製作年:2021年
製作国:ルーマニア、スウェーデン
日本配信日:2021年9月17日Netflixで配信開始
本編尺:1時間49分
監督:ダニエル・サンドゥ
出演:エイドリアン・ティチェニ、エレナ・プレア、ジュディス・スターテ
ジャンル:ドラマ
予告編
あらすじ
厳寒の雪山で息子が行方不明に。その知らせを受けた元情報局員は、我が子を見つけ出すためすべてを犠牲にする覚悟で、あらゆる手を尽くした必死の捜索を続ける。
感想
評価:★★★☆☆
物語は至ってシンプル。前妻との間の息子が遭難した状況で、父親はただ待つことしかできない。救助隊に一緒に登るといっても体力が切れて途中リタイア。救助隊も事前の前で人間は無力だといって最善を尽くしているように見えない。そこに夫を支えたいと現在の身重な妻も合流してしまう。苛立ちが募る中、一体何ができるのか。
彼はツテを駆使して情報局を捜索に介入させる。例えその方法が違法でも、なりふり構わずシステマティックな捜索が展開される。これまでも問題が生じれば権力や財力で周囲を黙らせ解決してきた強行突破型の男は、典型的な自分の半径1メートル以内が助かればそれでいいタイプの人間だろう。だが、人を見下して思うがままにコントロールできても、自然がそうはいかない。
本作はそんな人間のエゴイズムを揺さぶり、人間の命に重さや価値の違いがあるのかと天秤にかけてみせる。雪崩に合っておそらく助からず、人間にやれることには限界があるとは分かっているものの、これ以上続ければ他の人々を道連れにし深みにはまるかもしれないと分かっていながらも、実際に姿が見えるまでは諦めきれない。だが、息子の捜索よりも救える命を優先すべきなのかもしれないと、銀世界で悩むことになる。
父親として、人間として、どのように行動すべきなのか。シンプルな状況だからこそ、そこで下す男の決断の重さと、無線にも応答せずにひとりで闇雲に雪を掘り続ける姿にすべてを託す物語の切り上げ方に好感が持てる。