Netflixオリジナル『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合』感想(ネタバレあり)〜ハリウッド映画が積み上げてきた歴史とイメージの固定化〜
Netflixオリジナル『ハリウッドを斬る! ~映画あるある大集合』ネタバレ含めた感想です。お決まりの描写にツッコミを入れながら、ハリウッド映画が積み上げてきた歴史と、危険を及ぼすイメージの固定化を紹介する楽しい一作。
作品情報
原題:Attack of the Hollywood Cliches!
製作年:2021年
製作国:アメリカ
日本配信日:2021年9月28日Netflixで配信開始
本編尺:58分
出演:ロブ・ロウ、フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド
ジャンル:バラエティ
予告編
あらすじ
一匹狼(おおかみ)、素敵な出会い、爆発寸前の時限爆弾など。ハリウッド映画でお決まりの展開や"あるある"シーンについて、大物スターや業界関係者が深掘り解説。
感想
評価:★★★★☆
映画にはお決まりの展開がある。映画はフィクションであり、だからこそ現実とはかけ離れた定番が無数にある。それをリアリティがないと断罪するのは簡単だが、一方でそれはハリウッド映画の各ジャンルが試行錯誤して積み重ねてきた歴史でもある。
例えば、ロマコメの普通じゃない男女の出会い方、しつこく女性を誘う男性、それが逆になればストーカーやサイコパスとして描かれる。刑事は型破りが多く、バッジと銃が大好きで、退職日に殉職しがち。アクションでは敵を殺した後に捨てゼリフを吐き、格闘するときは敵は律儀にひとりずつ現れる。ホラーでは飼い猫や鏡を多用したフェイントで怖がらせ、ファイナルガールが悪と対峙する、といったようなものだ。
これらは作り手と観客が無意識に共有しているルールだ。突っ込みどころであり、映画そのものの愛嬌であり、それらの描写があると待ってましたという歌舞伎感さえある。本作はそれを愛あるイジりで紹介しているのがいい。
一方で、多様性という名目でチームに女性を入れることが逆に男性の視線にさらされることになる。白人の救世主としてマジカルにグロと呼ばれる黒人が登場する。同性愛者は病気で死にがち、顔が見にくく傷跡があれば悪役になりがちだ。
それらは女性や人種といったイメージを固定化する危険性もある。それは長年ハリウッドが押し付けてきた役割だろう。近年は意識的に様々な人種や性別のキャラクターを登場させる映画も増えてはいるものの、ただ登場させて手に余らせている場合や、逆に作り手の差別的な意識が潜在的に現れてしまっているものもある。それをひっくるめて、ハリウッドが積み上げてきた歴史と、これからのハリウッドの指標のようなものを改めて感じられる参考書のような楽しい一作。