映画『野球少女』感想(ネタバレあり)〜夢を負い続け、本気で努力する人間の瀬戸際の美しさ〜
映画『野球少女』ネタバレを含めた感想です。夢を負い続け、本気で努力する人間はいつ夢を諦めるのか、それとも続けるのか。瀬戸際を見極めなければならない岐路に立たされた人々の物語。
作品情報
原題:Baseball Girl
製作年:2019年
製作国:韓国
公開日:2021年3月5日
本編尺:1時間45分
監督:チェ・ユンテ
出演:イ・ジュヨン、イ・ジュニョク、ヨム・ヘラン
ジャンル:スポーツ
予告編
解説
韓国ドラマ「梨泰院クラス」で注目を集めたイ・ジュヨンが主演を務め、プロ野球選手を目指す女子高生の奮闘を描いた青春スポーツ映画。主人公を支えるコーチを「僕の中のあいつ」のイ・ジュニョク、母親を「無垢なる証人」のヨム・ヘランが演じる。
あらすじ
豪速球とボールの回転力が強みの女子高生チュ・スインは、高校卒業後はプロ野球選手の道へ進むべく練習に励んでいた。しかし女性というだけで正当な評価をされず、プロテストすら受けられない。さらに、友人や家族からも反対されてしまう。そんな折、プロ野球選手の夢に破れた新人コーチのチェ・ジンテが赴任してきたことで、彼女の運命は大きく動き出す。
感想
評価:★★★☆☆
本作で頭に浮かんだのは、投手としてナックルを武器に彗星のごとく野球界に登場した吉田えりだ。回転数の多さとストレートを早く見せる投球術というのは、プロ野球界で女子選手が活躍するのに理がかなった設定ではある。
本作は夢を負い続け本気で努力する人間が、あるいはその周囲の人間が、どうやって諦める/諦めさせる、意地でも続ける/続けさせるかの瀬戸際を見極めなければならない岐路に立たされた人々の物語だ。それはプロ野球に限らず、誰の人生にも訪れるターニングポイントだろう。
冒頭のドラフトの結果を待ち、寒い廊下で列をなす選手たちと、その最後尾にいる主人公の画が象徴的だ。その日の受かる受からないが、野球を続けるか辞めるかに直結する残酷さ。それでも闘志を燃やす主人公の目が素晴らしい。
同じくズルズルと夢を追う父親が試験の不正で逮捕されたことをどのように償い、またそれが彼女にどう影響したのか等、男性キャラクターの描き方の粗さは気になるものの、スポ根映画とは一線を画すクールさを兼ね備えた良作だ。