RICKのしまシネマ 

映画館のない離島から、NetflixやAmazonプライムビデオの新作配信映画を中心に爆速レビュー!

Netflixドキュメンタリー映画『ブラッド・ブラザーズ マルコムXとモハメド・アリ』感想(ネタバレあり)〜美しき友情の終焉、切なさいっぱいの物語〜

Netflixオリジナルのドキュメンタリー映画『ブラッド・ブラザーズ マルコムXモハメド・アリネタバレ含めた感想です。美しき友情の終焉と、切なさいっぱいの物語。

f:id:rick4455:20210915165408j:plain

作品情報

原題:Blood Brothers: Malcolm X & Muhammad Ali
製作年:2021年
製作国:アメリ
日本配信日:2021年9月9日Netflixで配信開始
本編尺:1時間36分
監督:マーカス・A・クラーク
出演:マルコムXモハメド・アリ
ジャンル:ドキュメンタリー

予告編

あらすじ

偶然の出会いから、悲劇の結末まで。マルコムXモハメド・アリが築いた固いきずなと友情が、不信と変わりゆく理想のもとで音を立てて崩れ去る。

感想

評価:★★★☆☆

 

尊師とマルコムXとアリの三角関係

モハメド・アリことカシアス・クレイにとって、マルコムXは自らをネーション・オブ・イスラムNOI)へと導いてくれた兄のような存在であり、また尊師アブドル・ラハマーンムハンマドは自らにイスラム名であるモハメド・アリという名前を付けてくれた父親のような存在です。またマルコムXも、元々は尊師を尊敬していました。

本作はこの三者の蜜月関係から、徐々に亀裂が入り、マルコムXだけがNOIを離脱し、いよいよ修復不能なところまで対立を深め、終いには暗殺されてしまうまでの悲しく切ない運命の物語を、関係者の証言によって語り直してみせます。

 

美しき友情の終焉

黒人は神聖で、白人は悪魔である。白人との統合ではなく、黒人は分離と自由を目指すべきだ。そして自己防衛としての暴力は容認し、黒人による軍隊を保有する。尊師を立てながらも、そんな理念と言葉の力強さでカシアス・クレイをも魅了するマルコムXのカリスマ性。だからこそ、暗殺直前にはたったひとりでアフリカを回ることになる彼の孤独と孤高っぷりが際立ってきます。

ここでNOI離脱以来疎遠となっていた、かつての弟であるカシアス・クレイと偶然鉢合わせし声をかけたものの、無視されることで長年の美しい友情は終わってしまったと自覚するマルコムXの切なさと言ったらこの上ない。それをアリも長年後悔していたという身内の証言含め、本作は「切なさ」で溢れています。

 

上司に逆らい、左遷される部下

マルコムXが孤立してしまった最大のポイントは、尊師の私生活やスキャンダルを暴露してしまったことです。現在であれば、暴露された側がマスコミや世間に晒され、餌食となることでしょう。ですが、当時は尊師は言葉の伝道師であり、使命は果たしているから悪くないと、逆に暴露した側のマルコムXが自分で自分の首を絞める事になります。

それ以前にもケネディが暗殺されたことを喜び、尊師が止めたにもかかわらずそれを公式なコメントとして世間に発表してしまったマルコムX。言葉の力強さやカリスマ性があっても、権威あるものに逆らえば、どうなってしまうのか。そんな中間管理職的なポジションでの立ち振舞という観点から見ても、本作はやはり「切なさ」いっぱいの作品だと思います。