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Netflix映画『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』感想(ネタバレあり)〜三世代にわたる愛情と憎悪のジェットコースター〜

Netflixオリジナル映画ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』ネタバレを含めた感想です。三世代にわたる愛情と憎悪のジェットコースター。アメリカ映画を見たという充足感が押し寄せる一作です。

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<作品情報>

原題:Hillbilly Elegy
製作年:2020年
製作国:アメリ
日本配信日:2020年11月24日 Netflixで配信開始
本編尺:1時間55分
監督:ロン・ハワード
出演:エイミー・アダムスグレン・クローズ、ガブリエル・バッソ
ジャンル:ドラマ

 

<予告編>
 

あらすじ


名門イェール大学に通うJ.D.ヴァンス(ガブリエル・バッソ)は、理想の職に就こうとしていたときに、家族の問題によって、記憶から消そうとしていた苦い思い出のある故郷へ戻ることを強いられる。故郷で彼を待ち受けていたのは、薬物依存症に苦しむ母親ベヴ(エイミー・アダムス)。幼いヴァンスを育ててくれた、快活で利発な祖母マモーウ(グレン・クローズ)との思い出に支えられながら、彼は自分の夢を実現するために、自分自身のルーツを受け入れなくてはならないことに気づく…。

 

感想


評価:★★★★☆

世間一般からは田舎や辺境だと見下され、自分もそんな故郷や生い立ちを隠したいと思っているにもかかわらず、それを貶されるとイラッと来るし、自分が田舎者であることも隠し切れない。特に田舎から上京した者なら、故郷や家族を意識する瞬間があるだろう。

本作はそんな田舎や家族が心温まる「ホーム」であるとは描いていないむしろ、アメリカンドリームからは程遠い、それを夢見ても応援する人も機会もなかなか巡ってこない場所や時間として主人公も記憶している。単なる愛着や愛情といったシンプルな感情では到底言い表せない、「磁場」のようなものに囚われている。

祖母と母親もそんな地域の中で、かつてはアメリカンドリームを夢見たが、今では夢破れた残骸のように生きている。そして子供世代にその夢を託すにもかかわらず、子供が夢を実現するためのしがらみとなって存在している。

そんな三世代にわたる家族の物語は、愛情と憎悪のジェットコースターを永遠と繰り返し、正直ストーリーの進み具合は鈍重であり、堂々巡りする。だが、それが積み重なることで、「磁場」にがんじがらめになった各々の心の有り様が輪郭をもって見えてくる。だからこそ、祖母の死以降を急にダイジェスト的に繋いでズンズン進むのは、バランスが悪いように感じる。

主人公は蓋をしてきた故郷や家族の記憶を、田舎から都会へ戻る道中で、夜な夜な恋人に話し続ける。物語を物語ることで囚われてきた磁場を相対化し、共有し、恋人もそれを受け入れることで初めて家族になる。アメリカンドリームを託された彼の、これからも続いていくファミリーヒストリー。まさにアメリカ映画を見たという充足感が押し寄せる。