Amazon Prime Video 映画『シンデレラ』感想(ネタバレあり)〜コロナ禍のミュージカルと価値観のアップデート〜
Amazon Prime Videoオリジナル映画『シンデレラ』ネタバレ含めた感想です。コロナ禍のミュージカルと価値観のアップデートによって新たなシンデレラ像を作り上げようと試みた一作です。
作品情報
原題:Cinderella
製作年:2021年
製作国:イギリス、アメリカ
日本配信日:2021年9月3日Amazon Prime Videoで配信開始
本編尺:1時間52分
監督:ケイ・キャノン
出演:カミラ・カベロ、イディナ・メンゼル、ミニー・ドライバー
ジャンル:ミュージカル
予告編
解説
「ピッチ・パーフェクト」のケイ・キャノンが監督・脚本を手がけ、おとぎ話として誰もが知るシンデレラの物語を、1980年代から現代までの世界的大ヒットポップソングで彩りながら、新たに描いたミュージカル。米ガールズグループ「フィフス・ハーモニー」の元メンバーで、グループ脱退後にはソロアーティストとして躍進し、グラミー賞にもノミネートされたシンガーソングライターのカミラ・カベロが主演。真実の愛を求めるだけでなく、自分の夢を実現させるために邁進する新たなシンデレラ像を体現した。継母役を「アナと雪の女王」のイディナ・メンゼル、国王役をピアース・ブロスナン、女王役をミニー・ドライバー、王子役を「ハートビート」のニコラス・ガリツィンが演じる。
感想
評価:★★★☆☆
何度も映像化されている『シンデレラ』を現代で製作するにあたり、まず今までの『シンデレラ』とどのように差別化するかがポイントだろう。その意味では『ピッチ・パーフェクト』のスタッフと歌えるキャストを揃えてミュージカルに仕立てたことと、現代の価値観にアップデートさせようとする意図は見える。
各々の身分で同じような日常を繰り返すさまを、冒頭から同じリズムを刻むミュージカルシーンで軽快に描き、この世界を「リズム・ネイション」として活写していく。そんな各々が舞踏会に集結するまで歌で盛り上げていくのも楽しく、またラストのそれぞれが地に足のついた適所に着地するのを祝福する大団円的な場面は、コロナ禍だからこそ、大勢が歌って踊るミュージカルのありがたみがひときわ炸裂する。
また王族という家柄や結婚という価値観に囚われない、舞踏会で踊るなんて時代遅れで共感できないと言い放つ王子と、ガラスの靴は歩きづらいと脱ぎ捨て、幸せのゴールを結婚ではなく商売が成功することに設定するシンデレラ。互いへの愛や敬意があってこその結婚と、自由な生き方を謳歌しようとする姿は清々しい。
ただし、ゴッドマザーという有名なキャラクターを黒人男性に設定したものの、なりふり構わず魔法でどんなきらびやかなドレスも仕立て上げられるためにシンデレラの商売敵になってしまうのではという懸念や、王子に代わって王位を継承する娘が、それがあたかも適材適所であるかのような雑な描かれ方など、かなり粗も目立つ作品だと思う。