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Netflix映画『コンクリート・カウボーイ 本当の僕は』感想(ネタバレあり)〜人間と馬がいるだけで、そこは彼らの居場所になる〜

Netflixオリジナルの新作映画『コンクリート・カウボーイ 本当の僕は』ネタバレを含めた感想です。フロンティアだけでない、濃密な馬と人間との知られざる物語に、静かな感動が押し寄せます。

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作品情報>

原題:Concrete Cowboy
製作年:2021年
製作国:アメリカ、イギリス
日本配信日:2021年4月2日
本編尺:1時間51分
監督:リッキー・スタウブ
出演:イドリス・エルバ、ケイレブ・マクラフリン、ジャハール・ジェローム
ジャンル:ドラマ

<予告編>
 

あらすじ


問題ばかりを起こしていた少年・コールが、夏の間、疎遠だった父親と暮らすことになり、固いきずなで結ばれたフィラデルフィアの黒人カウボーイコミュニティで成長していく。一方で、彼らを良しとしない警察や動物管理局は、馬小屋を取り壊そうとする…。

 

感想


評価:★★★★☆

馬という動物は、西部劇をはじめ様々な映画に登場する。そして、フロンティアスピリットのような拓けた未来へのイメージと重ねられ、肯定的に捉えられることが多い。本作も人間の営みと密接に関わっているものの、その景色はアメリカ的な原風景や大自然ではなく、街並みの一角に馬小屋があり、2階建ての家の1階部分で馬を飼育している。まずこのアンバランスな光景が新鮮で面白い。そこで語られるのは、西部だけでない、馬と人間との濃密な関係性だ。

かつてはたくさん馬小屋があった場所が、不動産屋によって駆逐されていく悲しみ。そんな中で、馬に愛情を注ぎ、焚き火を囲んでバカ話をする中年の黒人たちは、時代に取り残されたカウボーイの孤児にも見える。だが、例えば亡き弟の名前をつけた白馬に、足が不自由な兄貴がただまたがるだけで、これほどまでに感動的になる。

そんなコミュニティの輪に入っていく放蕩息子。当て所無く街をさまよい自分の置かれた状況理解していく虚しさ、そして居場所を求める彼を受け入れる父親たちの関係が美しい。特に市街地の校庭に馬が脱走し、皆で手と手を取り合い輪になって取り囲み、息子が馬に乗るのを大人たちが温かく見守る名場面は、彼らの関係性を見事に象徴している。

ラストにはいよいよ守り続けてきた馬小屋が重機で壊される。それを横目に、また新たな地を求めて、街を走るバスの車窓から、馬で疾走しする七人の姿が映し出される。内と外で時代がズレているのではないかと錯覚してしまうような見せ方が効果的だ。人間と馬がいるだけで、そこは彼らの居場所になるのだ。