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Netflixドキュメンタリー映画『偽りのサスティナブル漁業』感想(ネタバレあり)〜「サスティナブル=持続可能」という流行り言葉で片付ける危険性〜

Netflixオリジナルの新作ドキュメンタリー映画『偽りのサスティナブル漁業』ネタバレを含めた感想です。何でもかんでも「サスティナブル=持続可能」という流行り言葉で片付ける危険性に触れる一方で、扇情的で偏った作りに問題がある作品だと思います。

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<作品情報>

原題:Seaspiracy
製作年:2021年
製作国:アメリ
日本配信日:Netflixにて2021年3月24日配信開始
本編尺:1時間29分
監督:アリ・タブリージー
ジャンル:ドキュメンタリー

 

あらすじ


愛する海の生態系を守りたい。そんな思いで、人間が海洋生物にもたらした弊害をカメラに収め始めた映画監督がたどり着いたのは、世界規模の隠ぺい工作。日本の捕鯨、フカヒレ産業と混穫、不透明なドルフィンセーフ認証マークの審査基準、魚網漁具の有害性、商業漁業、違法漁船、養殖、そして海洋奴隷まで多、地球上で行われる漁業の問題を角的に浮かび上がらせる。

 

感想


評価:★★★☆☆

22歳で海洋番組を制作してから、愛する海をなんとかしたい、自分でできることは何か、という一般人のようなスタート地点からはじまる本作は、疑問に思ったら自ら行動しインタビューしていく作り手と観客の視点が同一化していき、時系列で核心に迫っていくスリリングで分かりやすい構成が光っている。ここまで調べたら後には引けないという状況に陥っていくさまは、作り手の想定を超えていくドキュメンタリーならではのは面白さだ。

豊富なデータと多角的な着眼点で漁業の現状を立体的に浮かび上がらせていく一方で、「サスティナブル=持続可能」というSDGs的な流行り言葉によって何でもかんでもラベリングすることで、問題の本質や意味を見えにくくする世界的な兆候に疑問を投げかけている点も見事。

だが、特に前半の扇情的な作りな割にわりに肝心な部分はアニメーションで逃げる手法、その地域の文化的な視点がごっそり抜けている偏った見方、大規模商業漁業と地産地消のような小規模漁業との違いも触れなければいけないだろう。ラストに結局「動物を殺すのは可哀想」という人道的な甘い着地をするのも、もはや漁業に限った話ではなくなり、焦点がボケてしまうのも勿体ない。

 

 

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