Netflix映画『アンカット・ダイヤモンド』感想(ネタバレあり)〜瞬発力で窮地を切り抜け続けた狂人が浮かべる恍惚の表情〜
Netflixオリジナル映画『アンカット・ダイヤモンド』ネタバレを含めた感想です。冷や汗と怒号にまみれて瞬発力で窮地を切り抜け続けた狂人が浮かべる恍惚の表情が最高!アダム・サンドラーのベストアクト!
あらすじ
ギャンブル中毒の宝石商ハワードは、借金まみれで常に取り立て屋から監視されていた。そんなある日、ハワードはエチオピアで採掘されたブラックオパールの原石を手に入れる。ハワードはその石をオークションに出品して大儲けしようと考えていたが、店を訪れたNBA選手ケビン・ガーネットが異常なほどに興味を示し、仕方なく彼と取引することに。しかし事態はさらにハワードの望まぬ方向へと転がっていく。
感想
評価:★★★★★
鉱石場で黒人とアジア人が言い争う場面からはじまる本作は、ダイヤモンドという小宇宙に見せられた男が、様々なトラブルを同時多発的に解決して一発逆転を狙おうとする犯罪劇である。だが、そこには例えば『スティング』のような爽快感やスマートさは微塵もなく、ひたすら冷や汗と怒号にまみれて瞬発力で切り抜けていく。
今にも足を踏み外して命を落としかねない危ない橋を口八丁で渡り切ろうと躍起になるアダム・サンドラーがとにかく最高。彼の頭の中で描く最高のシナリオ通りには事が進まない展開に終始イラついているが、そもそも狂人が考えるその計画自体が狂っているので、そのてんやわんやぶりに可笑しみと愛嬌さえ滲ませる。
特に同時多発的にかかってくる電話を、口から出まかせで捌いていく場面など、とにかくテンポが良く、あれよあれよと物事が分単位で転がっていく様が実にスリリング。その高速回転に振り落とされまいと、主人公も観客も必死にしがみつくエネルギーが充満していく。
全くスマートな形でないにしろ、傷つきながらも泥臭く橋を渡り切り有頂天になる彼に待ち受ける仕打ちももはやコメディ。ようやくたどり着いた人生の絶頂期に恍惚の表情を浮かべる、まさに絵に描いたような馬鹿面が脳裏にこびりついて離れない。そのシニカルな幕引き含めて、サンドラーのベストアクトから目が離せない傑作。