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Netflix映画『漁村の片隅で』感想(ネタバレあり)〜教育には、世界を変える可能性がある〜

Netflixオリジナルの新作映画『漁村の片隅で』ネタバレを含めた感想です。
一人の少女の力強い意思によって、「教育」の力を信じたくなる映画です!

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<作品情報>

原題:The Fisherman’s Diary
製作年:2020年
製作国:カメルーン
日本配信日:Netflixにて2021年4月4日配信開始
本編尺:2時間22分
監督:エナ・ジョンスコット
出演:カン・クィントゥス、フェイス・フィデル、キャッソン・チネポー
ジャンル:ドラマ

 

あらすじ


ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイに触発され、自分も学校教育を受けたいと思うようになった12歳の少女・エカ。だが、彼女のことを「小さな母ちゃん」と呼び頼っている漁師の父親・ソロモンや、村人たちから大反対され、唯一の理解者であった母親・バーバラも病死してしまう。やがて、ある教師との出会いから、学ぶことの喜びを知ったエカだったが、「教育」を恐れる大人たちの思惑によって、過酷な環境に置かれることになる…。

 

感想


評価:★★★☆☆

珍しいカメルーン製の映画

本作は日本でなかなか観る機会の限られているカメルーン製作という貴重な映画です。アカデミー賞の主要部門に食い込むような作品を輩出する一方で、このような劇場で公開されないような世界中の映画をきちんと配信してくれるのがNetflixのいいところですね…。

また、2021年のアカデミー賞国際長編映画賞部門でカメルーン代表に選出されたこともあり、尺は長いですが、そのぶん見応えはたっぷり。音楽の使い方が特徴的で、少女が置かれた環境とハードな展開を少し和らげるような印象を受けます。

教育とは

本作は教育を主題に、終始展開していきます。漁師村に生まれたからには、授かった職は変えられず、その敷かれたレールを歩くことを娘のエカに「教育」する父親。一方で、学校へ通い「教育」を受けたことで、閉鎖的な村のルールに疑問を抱き、外へ飛び出した母親。父親も母親もそれぞれ自分の「教育」を信じ、だからこそ互いに亀裂が生じていくその過程を時系列を効果的に操作し、浮かび上がらせていきます。

父親は母親に対し、愛情と思いやりのすべてを捧げたと言い切ります。その一方で、母親をはじめとする「教育」を受けた者に対し、教育を受けたものは怠け者になるから、貧しくなる。また、魚の値段に文句を言うような知恵だけつける。だから、女に教育は必要ないと娘に言い放ちます。教育に毒され、だまされるなと教える根底には娘への愛情が確かにあるからこそ、間に挟まれたエカの葛藤や息苦しさがひしひしと伝わってきます。

マララ・ユスフザイという人物

劇中でエカは周囲の大人たちに何度も教育を受けたいという想いを跳ね返され、悪い遺伝子がなくなるまで父親にムチで打たれ、殴られ、終いには12歳にもかかわらず、漁村のヤクザ者である金貸しの男に強制的に嫁がされ、地獄のような日々を送ることになります…。

そんな状況でも、彼女の心を支えたのは、マララ・ユスフザイというパキスタンの女性教育の提唱者であり、史上最年少でノーベル平和賞を受賞した女性の、次のような言葉でした。

1人の子供と1人の先生、1冊の本と1本のペンが世界を変える。
男1人が世界を壊せるなら、少女1人で不可能なわけがない‥。


女性の権利を主張した実際のマララは、武装勢力タリバンに銃撃されます。裏を返せば、それだけテロリストにとっても「教育の力」は脅威となるということです。どんな目にあっても「教育」の権利を掴み取ったエカも、世界に向けて力強いメッセージを放ちます。本作が「実話に基づいた物語」ということが、その真実味をより一層強固なものにすることに成功した良作でした。