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Netflix映画『ザ・ホワイトタイガー』感想(ネタバレあり)〜光の国・インドのダークサイドサクセスストーリー〜

Netflixオリジナル映画『ザ・ホワイトタイガー』ネタバレを含めた感想です。本年度アカデミー賞脚色賞にもノミネートされた光の国・インドのダークサイドサクセスストーリーです。

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<作品情報>

原題:The White Tiger
製作年:2021年
製作国:インド、アメリ
日本配信日:2021年1月22日 Netflixで配信開始
本編尺:2時間5分
監督:ラミン・バーラニ
出演:アダーシュ・ゴーラブ、ラージクマール・ラーオ、ビジャイ・モーラ
ジャンル:ドラマ

<予告編>
 

あらすじ


インドの貧しい村で生まれ育ったバルラムは、裕福な一家の運転手として働くことに。持ち前のずる賢さで主人の信頼を得るバルラムだったが、ある事件をきっかけに、これまでの奴隷のような人生から抜け出すことを決意する。

 

感想


評価:★★★★☆

共に経済成長国として世界をリードする大国へとのしあがった中国とインド。本作は中国の温家宝に手紙を書く体で、起業家である主人公がその半生を語っていく光の国・インドのダークサイドサクセスストーリーである。

彼から語られる物語は、カーストによって生まれながらに将来が確定し、使用人として仕えることが骨の髄まで染み付いき、まるでニワトリの檻のように彼らを閉じ込めているインドの社会や文化の有り様である。

インターネット=外部の情報に触れる機会もない彼らは、宗教や年長者の教えが例え理不尽であろうがそれを信じて生きるしかない。そして富裕層や情報強者は、使用人の出自や家族の居場所を人質に、都合のいいときだけ家族扱いし、そして時には無知をいいことに罪を被せていつでも解雇する。

そんなインドの「檻」に対して疑問を抱く、主人の恋人であるアメリカ人の存在が本作を面白くする外部の視点から不条理な「伝統」を破壊しようとし、それによって主人や使用人も感化されていく。だが、そんな閉塞感を打破する希望の存在である彼女が、劇中でもターニングポイントとなる交通事故の当事者となることで、かえって使用人を絶望へと導いてしまう展開が見事。

主人への愛情や憎悪、賄賂が横行する政治への不信感、貧困層から搾取する富裕層への反逆。使用人だからこそ、見えてくる光景や世界があり、だからこそ主人公はアイデンティティが麻痺し、この状況から唯一抜け出せる術を繰り出すか苦悩する。

そんな丁寧な過程の積み重ねと迫力の末に、最期に使用人が主人に言い放つ「早く替えるべきでした」という台詞が、こうならざるを得なかった互いの心情を的確に表現してみせる。また2人の複雑な関係性を泥酔した主人を使用人がビンタで起こそうとする場面で象徴的に描いている等、パワフルでスピーディーなストーリーテリングの中に、丁寧な人物描写も織り込まれている力作だ。