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Netflixオリジナル短編映画『隔たる世界の2人』感想(ネタバレあり)〜不条理で危険たっぷりの「無理ゲー」な日常〜

Netflixオリジナルの短編映画『隔たる世界の2人』ネタバレを含めた感想です。不条理で危険な「無理ゲー」な世界を追体験させながら、日常の問題と接続してみせる「タイムリープもの」の傑作です。

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<作品情報>

原題:Two Distant Strangers
製作年:2020年
製作国:アメリ
日本配信日:2021年4月9日Netflixで配信開始
本編尺:32分
監督:トレイヴォン・フリー、マーティン・デズモンド・ロー
出演:ジョーイ・バッドアス、アンドリュー・ハワード、ザリア
ジャンル:SF

<予告編>
 

あらすじ


イムループに閉じ込められた男が、愛犬が待つ自宅に戻る途中で、警官ともめて殺される恐怖を何度も繰り返す。アカデミー賞最優秀短編映画賞ノミネート作品。

 

感想


評価:★★★★★

時間という概念と相性のいい映画は、これまでに数々のタイムリープもの」の傑作を生み出してきた。その中でも、『ミッション・8ミニッツ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ハッピー・デス・デイ』など、日常を繰り返すことで生き抜くための正しい選択を学んでいき、最終的に死という運命から逃れることをゴールとするものだ。

本作も「タイムリープもの」として同様のゴールが設定されている。だが、本作にはゲームオーバーになってステージの初めからやり直すといったテレビゲーム的な気軽さはない。白人警官の高圧的な顔と流血のイメージが細かいカットによって繰り返されることで、この世界で黒人が受け続けている憂鬱で不条理で危険な日常を追体験させるような機能として働いている。そこが素晴らしい。

ホテルから外に出れば、イチャモンをつけられ、そのまま地面に倒され首を絞められ殺される。ホテルの中にとどまれば、部屋のドアを蹴破り銃殺される。不条理な尋問を先回りし、日常と違うルールで生きていることを訴えかけ、白人警官とほんの少しだけ歩み寄ったように見える感動的な展開を迎えることもある。だが、パトカーで親切に家に送ってもらっても、白人警官も同じルール上にいることが発覚し、自宅前で殺される。こんなの無理ゲーであり、そんな無理ゲーの中で生きている人々もいるということを強烈に示してみせる。

このループから抜け出す可能性として、白人警官を殺すという手段もあるかもしれない。だが、正当防衛としてそんなことをしても、誰も聞く耳を持たず、憎悪がますます強まり、負の連鎖が強まり、また新たな白人警官が追ってくるだけだ。ラストで被害者の名前と、命が失われた日常の些細な状況がテロップで表示される。それは、SF的な特殊で閉鎖的な物語を拡張し、そこらじゅうで白人の目に追われている世の中と接続してみせる。そのジョイントのしかたは、スパイク・リー作品よりも洗練されている。