Netflix映画『ナイトブック』感想(ネタバレあり)〜「物語る」ことの尊さ〜
Netflixオリジナル映画『ナイトブック』ネタバレ含めた感想です。ジュブナイルホラーの体を取りつつ、「物語る」ことの効果や可能性、尊さを真摯に描いた良作。
作品情報
原題:Nightbooks
製作年:2021年
製作国:アメリカ
日本配信日:2021年9月15日Netflixで配信開始
本編尺:1時間43分
監督:デビッド・ヤロベスキー
出演:ウィンズロウ・フェグリー、リディア・ジュウェット、クリステン・リッター
ジャンル:ホラー
予告編
あらすじ
怖い話が大好きな少年、アレックスは魔女に捕まり、魔女に毎晩怖い話を聞かせることに。捕らわれの少女と力を合わせ、アレックスの脱出作戦が始まる!
感想
評価:★★★☆☆
本作はホラー映画として見れば、子供向けで怖くないと思うかもしれない。だが、この映画の肝は「物語る」ことの効果や可能性だ。無から自らの頭で物語を紡ぐことは、個性や才能であり、自分自身のトラウマを吐き出す浄化作用であり、恐れや悲しみを誰かと共有することであり、誰かを助ける力がある。それが例え子供だましの取り留めのない話であろうと、「物語る」ことは尊いのだ。
冒頭からホラー好きの両親が、自分たちがもっと普通だったらうまくいっていたはずなのにという嘆きが聞こえる。それはホラー好きの息子の趣味を否定することで、彼自身のこれまでの人生をも否定することになる。だからこそ、彼は怖い物語を書くのをやめ、「普通」になろうとする。
そこから彼は魔女と出会い、強制的に毎日「ストーリーテラー」となることを強いる。ここで面白いのは、つまらなかったり、怖くなかったり、物語に真実味がなかったりすれば、魔女の視点からちょこちょこダメ出しを入れる点だ。それはまるで、作家と担当編集者の関係性のようであり、魔女という敵や悪と見なされがちな存在が、彼が「物語る」ことを結果的には後押ししているという展開が興味深い。
小道具、舞台装置、音響、照明といった画作りに関わるいちいちがいい仕事をしており、また彼が物語る世界は舞台的な演出を施すメリハリも視覚的に楽しい。魔女のもとから脱出するという縦軸がありつつ、ノーマルになれば自分に何も残らず、本当に認めてほしい、ありのままの自分を受け入れるというテーマもいい。